投稿記事一覧
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物語論
作者との内輪話によって読書はより楽しくなる
はじめに 本を日常的に読んでいる方は、こんな経験があるかもしれません。同じ作者が書いた本でも、同じジャンルの本でもないのに、「この内容(表現)、他の本でも見たな……」。さらに驚かされるのは、遠い昔に読んだ本ではなく、直前に読んだ本の内容が、... -
物語論
人が小説を読む理由
はじめに 世の中には読書家と呼ばれる本をこよなく愛す人々がいます。わたしは彼らと肩を並べるほど多くの本を読んでいませんが、それでも本の魅力は多少なりとも知っているつもりです。 読書は良いものです。知らなかったことを教えてくれ、経験させてく... -
概論
絵画から知る西洋の中世と近世の違い
はじめに 歴史学における時代区分は、「古代」「中世」「近世」「近代」「現代」で表されます。 紛らわしいのは近世と近代です。近代と言うには言い過ぎだけれど、明らかに中世とは違う。そんな中間時代を近世と呼びます。西洋では具体的には、ルネサンス... -
芸術
廃墟はなぜ美しいのか
はじめに 「美学」という言葉を初めて聞いたのは学生のころでした。どうやら哲学の一領域らしい。その時は、「美しくなるための方法を研究するのかな…でもなぜ哲学科のジャンル?」などと思ったものです。哲学科の女の子たちがやたらオシャレで可愛かった... -
作品考察
『指輪物語』でフロドが灰色港から旅立つ理由
はじめに ハリーがニワトコの杖を捨てる理由で、ファンタジー冒険物語の定型プロットは、「行きて帰りし物語」であると説明しました。それは以下の4段階を踏むプロットです。 1. 主人公が超自然的な力を得る 2. 1の力をきっかけに、日常世界から異界へと旅... -
作品考察
『ハリー・ポッター』でハリーがニワトコの杖を捨てる理由
はじめに 西洋における森の歴史で、むかし人は自分の暮らす共同体(村・町)の外を「異界」ととらえていたとお話しました。村を囲う柵を一歩越えれば、そこは神々・精霊・悪霊の住まう世界だったのです。 現代では「異界」は消えてしまいました。超自然的... -
作品考察
『ラ・ラ・ランド』でミアとセブが別れた理由
はじめに 『ラ・ラ・ランド』においてなぜミアとセブは別れなければならなかったのか? 先日、遅ればせながら『ラ・ラ・ランド』を観ました。ネットを見ると様々な意見がありますが、ここでは私個人の見解をご紹介できればと思います。 物語のあらすじ ロ... -
キリスト教
西洋になぜキリスト教が浸透したのか
現在、西洋で最もメジャーな宗教はキリスト教です。しかし西洋の人びとは、古代期までローマ神話に代表される多神教を信仰していました。つまり、キリスト教は中世期になって西洋に浸透した宗教なのです。 中世期以前に大陸の主権を握っていた、ローマ帝国... -
服飾
西洋における青の歴史 – 人気の色になるまで
人の好みというのは、文化的背景に左右されます。たとえば日本人は紅葉を楽しむのが好きですが、外国人からすると「なぜ枯れた葉を見にでかけるのか理解できない…」と思うことがあるようです。 色の好みについても同じです。「この色は良い色だ」と私たち... -
芸術
中世後期の風景画の特徴と魅力
はじめに 西洋における森の歴史で、「風景画」という絵画のジャンルが確立したのは17世紀ごろだとお話しました。簡単に言うと、森が「異界」でも「征服すべきもの」でもなく、「癒し」としてとらえられるようになってからです。 西洋絵画といったらルノワ...