投稿記事一覧
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作品考察
アントニオ・タブッキ『インド夜想曲』の紹介
はじめに 今回は、イタリア生まれの作家でありポルトガル文学研究者である、アントニオ・タブッキ『インド夜想曲』を紹介します。ネタバレはなしです。 読もうと思ったきっかけ 私は西洋中世史という興味関心上、普段から西欧文学をよく読みます。しかし「... -
仕事
写本制作所としての修道院
はじめに ローマ・カトリック教会の施設は中世期を通じて大きく2つに分けられます。1つが町に必ず1つある教会堂(聖堂)であり、もう1つが世俗から離れた場所に建設された修道院です。 教会堂とはその大小を問わず、王権と結びついた施設です。西洋になぜ... -
言葉
西洋中世期における言葉と文字に宿る霊性
はじめに 魔法から科学への移行にて、科学革命が起こる前と後で人びとの世界に対する認知ベースが変わったことをお話しました。前時代では世界は超自然的な力(≒魔法)によって支配されていると考えられていましたが、後時代からは数字(≒科学)によって支... -
作品考察
『風の谷のナウシカ』の世界観を考える
はじめに 映画『風の谷のナウシカ』は宮崎駿が『アニメージュ』で連載していた同名のタイトルの漫画を原作とします。公開年は1984年。制作会社こそスタジオジブリではないものの、のちにスタジオジブリで活躍するスタッフが手掛けた映画として、世間ではス... -
作品考察
映画『戦場のメリークリスマス』の解説
はじめに 1983年に公開された『戦場のメリークリスマス』(英: Merry Christmas, Mr. Lawrence) は日本、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドの合作映画です。第二次世界大戦中のジャワ島における日本軍捕虜収容所を舞台とし、日本兵とイギリス人捕... -
キリスト教
西洋における光の文化史
はじめに キリスト教における旧約聖書の冒頭には、光と闇に関する象徴的な記述があります。 初めに、神は天地を創造された。地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、神の霊が水の面を動いていた。神は言われた。 「光あれ。」 こうして、光があった。神は... -
作品考察
映画『ミッドサマー』の解釈 – 物語はハッピーエンドなのか?
はじめに 2020年2月21日に日本で公開された、映画『ミッドサマー(Midsommar)』を観ました。目的は2つあり、舞台芸術(衣装、舞台セットなど)の美しさを観ること、夏至祭の描かれ方を観ることでした。 観る前のイメージと、実際に観たときの印象はまったく... -
町や村
西洋における光源としての火の利用
はじめに 文明の象徴としての火で、火は人が人らしく暮らすために欠かせないものであると紹介しました。火の光源としての機能によって、人は夜に活動できるようになりました。またその熱源としての機能によって、人はより快適に暮らすための技術を発展させ... -
森
西洋中世期における森の利用と保護への動き
はじめに かつてヨーロッパ大陸には、ローマ帝国というラテン民族が建てた大帝国がありました。しかし476年、北欧から勢力を拡大してきたゲルマン民族によって西ローマ帝国が滅ぼされます(東ローマ帝国は存続する)。この時点で、ヨーロッパ大陸の覇権は... -
森
西洋中世期の森へ入る職業
はじめに 西洋における森の歴史で、西洋人が開墾が進むまでの森を、「異界」と捉えて恐れていたことを紹介しました。しかし森は人々が生活する上で必要な、様々な恵みをもたらします。木材、水、木の実、食用にする動物、蜂蜜など。中世期には、そのような...