急な砂の坂。足を取られてなかなか進まない。

鳥取砂丘周辺【鳥取/島根旅行2022-①】

はじめに

よし。10月に長期休暇を取ろう。そして旅行しよう。

そう思った私は友達に連絡しました。数年前に、1人で海外旅行をしてみようと思って、クロアチアへ行ったことがありました。楽しかったのですが、会話する人がいなくて、退屈な時間も多かったです。いちばん強くそう思ったのは、ど田舎(プリトヴィツェ湖群国立公園)のバス停でバスを待ちつづけているときでした。会話する人がいないと、待ち時間がとても長く感じました。

プリトヴィツェ湖群国立公園近くのコテージに泊まったときの、窓からの景色。
プリトヴィツェ湖群国立公園近くのコテージに泊まったときの、窓からの景色。

1人で考え事をすればよいではないか、と私も思ったのですが、その時実感したのは、1人で考えられることは実は非常に少ないということです。私たちは人と対話しながら、あるいは対話を後から思い出して、考え事をします。例えば、本を読みながら考え事をするときでも、私たちは著者と対話していると言えます。本が読めない環境で、本当に1人きりだと、何も新しい考えが浮かんでこないのです。

そんなわけで、誰かと一緒の旅が素晴らしいものだと学んだ私は、友達に連絡を取ったのでした。友達も10月に休暇を取れそうとのことで、一緒に旅することになりました。

旅行先を決める

旅行の候補地としてまず挙がったのは屋久島でした。友達も私も自然が好きなので、原生林を見てみたかったのです。まずは宿を取らなければと思って調べてみると、アクセスのよい宿はすでに予約で埋まっていて、車で行くしかない宿しか残っていませんでした(屋久島では後者のほうが圧倒的多数)。私はペーパードライバーだし、友達も車の運転は人を乗せるほど自信がないとのことで、屋久島案は却下になりました。

そこで「ラクダに乗ってみたいから、鳥取砂丘はどう?」と提案したところ、賛同を得られたので、鳥取と、ついでに島根にも行くことにしました。全国の神様が集まる島根の出雲大社は、神道文化を受け継いでいる日本人としては一度は行ってみたいですよね。

鳥取砂丘コナン空港へ

「私、2カ月以上前から長期休暇取るって予告してましたよね?どうして今になってから仕事を増やすんですか?」と上司にキレそうになりながら(ちょっとキレてた)、なんとか仕事を終わらせました。連日の残業で寝不足のまま、早朝の羽田空港へ向かいます。最後に飛行機を使ったのは2020年の夏だったと思うので、飛行機はかなり久しぶりです。家族以外の誰かと旅行するのも、コロナ渦以降はじめてです。テンション上がりますね。

空港で友達と合流しました。キャリーケースを預けようと歩いていると、なんと、自動荷物預け機械を見つけました。いつから自動化されたんでしょうか。ぜんぜん知りませんでした。キャリーケースを指定の場所に置いて、タッチパネルで操作すると、自動で荷物が吸い込まれていきました。おお……航空会社のグランドスタッフさんの仕事って確実に減っているよな….…大丈夫なんだろうか。

最近、商社の事務職として入社した友達も、「事務職という概念がなくなったから、実質、総合職になった」と言っていました。その子はもともと総合職よりの仕事をしたいと思っていたから問題ないみたいですが、そうでない人は大変なことでしょう。という時代の変化への適応について考えたりしました。

飛行機が離陸したあと、私はすぐに爆睡しました。気圧が下がるとなんか眠くなりますよね。いや、寝不足だったからか。1時間半くらいで、鳥取砂丘コナン空港に着きました。「コナン」ってなんのことだろうな、と思っていると、空港に『名探偵コナン』のイラストがたくさん描かれていたので、その「コナン」か、と気づきました。作者の出身が鳥取県なのですね。

荷物受け取りエリアでのんびりしていると、空港のスタッフさんがやってきて、「鳥取市内に行かれるなら、バスはあと5分で出ますよ」と言われます。なるほど。この言い方は、バスは飛行機が到着したタイミングでしか運行されないやつだ。我々は急いでバスに乗り込みました。

たくみ割烹店で昼食

市内に着きました。え……? 今日って休日だよね……? ぜんぜん人が見当たらず、閑散としています。ここは本当に県庁所在地なのだろうか。これが鳥取県ということか……山梨県とよい勝負……

とりあえずお腹がすいたので、昼ご飯にしようということになります。元は民藝品のみ売っていたが、実際に民藝品の器を使う場として定食屋も併設するようになった、「たくみ割烹店」というお店に行ってみます。建物が古く伝統的で、素敵でした。11時の開店まで10分ほど時間があったため、店の隣の民藝品売り場をのぞいてみました。そのとき思ったのは、日本の器は、色の出方などの点で、「偶然性」を大事にしているようだということです。

偶然性について、昔の人(折口信夫的には「古代人」)は人知を超えたものに近いと考えていたのではないでしょうか。例えば以前の記事※では、古代ギリシア人はインスピレーション(霊感)が神々からもたらされるものと考えていた、と紹介しました。それは、インスピレーションが自分の思考内からではない、別の場所から生まれるように思えたからです。つまり、人間の力で制御できない部分というのは、神性に近いと考えられます。その前提に基づくと、窯に入れたあとの器がどうなるかは、人間の力で制御できないため、偶然できた色やゆがみは神の息吹がかかっていると考えられます。ゆえに、日本人は「偶然性」をあえて器に取り入れようとしてきたのではないかと、私は考えます。

西洋中世期における言葉と文字に宿る霊性

そんなことを考えていると、定食屋が開店したので、店内に入ります。日本家屋を西洋風にアレンジした、明治維新時代のような印象を受ける素敵な店内でした。壁に設えられた本棚には、民藝品に関する本と、詩集が並んでいます。田中陽子さんの『ゆずりはの詩』という詩集が気になり、とりあえず欲しいものリストに加えます。

私は牛すじ煮込定食を、友達はみそ煮込カレーを注文しました。牛すじ煮込定食は、おひつに入った白米、サツマイモ入りの味噌汁、ナスの田舎煮、牛すじ煮込、漬物という内容です。それプラス、季節の果物がつきました。その日は柿と、鳥取産の二十世紀梨でした。

牛すじ煮込定食
牛すじ煮込定食

季節の果物
季節の果物

どれも器が素敵で、味もとても美味しかったです。こんなにきちんとしたごはんを食べたのが久しぶりで、食事の時間って幸せな時間なんだな….…としみじみ思いました。

ラクダに乗りに砂丘へ

鳥取砂丘。向こうに見えるのは日本海。
鳥取砂丘。向こうに見えるのは日本海。

お腹も満たされたので、市内から出ているバスに乗って、鳥取砂丘へ向かいます。実は空港から市内へ来るときも、地図上では左手に砂丘が見えそうな距離だったのですが、低山が立ちはだかって見えませんでした。つまり、砂丘は山々に囲まれているということです。もし山に囲まれていなかったら、砂が街へ飛んできて大変なことでしょう。ちなみに、砂丘の山に囲まれていない側は海に接しています。砂丘は砂浜の延長上にあるということを、現地に着いて初めて知りました。

砂丘は、さすが観光地だけあって、周りに出店がいろいろとあり、人もたくさんいました。おそらく駅を使う人はまれで、みんな車でここに訪れるのでしょう。広い駐車場では、警察音楽隊が吹奏楽の演奏をしていました。

砂丘に入ってみると、5頭のラクダがいました。ラクダは観光客を乗せて、直径二十メートルくらいの楕円を描いて戻ってくるという、見ているこちらが虚無に襲われそうな仕事を繰り返していました。想像ではもっと広々とした場所を歩いているのかと思っていました。とはいえ我々はラクダに乗りに鳥取へやってきたので、1500円を払ってラクダに乗りました。

フタコブラクダの、へこんでいる部分に鞍が置かれているので、そこに乗ります。ラクダは馬より背が高いので、馬に乗るときよりも前後にゆらゆら揺れました。持ち手に捕まっていないと落ちてしまいそうです。ラクダをけん引しているお兄さんが、その日何十回繰り返してきたのだろう、同じ説明を抑揚もなく語りだします。ラクダについて色々と説明してくれたのですが、ラクダの名前がリサちゃんということ以外、覚えていません。どんなテンションで相づちを打てばよいのか分からないまま、3分ほどのラクダ乗り体験がおわりました。

海を見晴らせる丘を登る
海を見晴らせる丘を登る

人の波が海へと続く丘へ流れているので、とりあえずその丘を登ってみよう、ということになりました。なだらかな上りではなく、あえて急な上りを選んで登っていきます。すぐに息が上がって、ぜえぜえしはじめます。あ! この海の塩気を含んだ砂に、上り坂の砂地といえば、安部公房の『砂の女』の世界観ではないですか。そうか、安部公房は鳥取砂丘をモデルにして、あの閉鎖的な砂の村を創りだしたのですね。

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今年6月の「100分de名著」にて、ヤマザキマリさんが解説で『砂の女』が取り上げられたばかりです。タイムリーで幸運だったなと思いました。

急な砂の坂。足を取られてなかなか進まない。
急な砂の坂。足を取られてなかなか進まない。

普段からアウトドアをしている友達が先に丘の頂上に辿りつき、高みの見物をしています。私はといえば、ほとんど在宅勤務なうえに、運動は朝昼の散歩くらいなので、体力がありません。この旅行が大変よい運動になりそうです。冬にハーフマラソン走る約束しちゃったし、もっと体力つけないとな……と思いながら頂上に着きました。

丘の上から見る日本海
丘の上から見る日本海

頂上に着くと、ここに来るまでのバスで一緒だった外国人観光客がいました。コロナ渦以降、2022年10月になってから、やっと個人の外国人客が日本を観光できるようになったので、このような光景は久しぶりに見ました。朝の通勤で東京メトロを使っていたとき、いきなり外国人女性に腕を掴まれ、「この電車は築地市場に行くの!?」とものすごい焦りようで尋ねられたことを思い出しました。またそんな平和な時代がやってきつつあるのですね。

砂の美術館

我々は砂丘を後にし、靴の中と靴下の中に入った砂を払いました。そして、ここへ来たもう一つの目的である、「砂の美術館」へ向かいました。砂の美術館では、鳥取砂丘の砂と水のみを使ってつくられた、砂像が展示されています(接着剤、凝固剤などは一切使われていない)。砂像は1点1点、国籍も様々な一流の砂像アーティストが制作していて、なんと、1年に1回、取り壊されて別の作品に生まれ変わります。砂像制作には毎回同じ砂が使われるので、砂の美術館に展示されているのは、大変エコロジカルでサステナブルな芸術品なのです。

今期の砂の美術館のテーマは、「砂で世界旅行・エジプト編」でした。そのため、エジプトにまつわる様々な砂像が展示されています。エジプトは砂漠の国なので、砂像で表現するにはぴったりのテーマだと思いました。全22作品のうち、印象に残った作品を紹介していきます。

作品1:ルクソール神殿

作家の想像力で、ルクソール神殿とイシス神殿を組み合わせた作品です。リトアニア人のアンドリウス・ペトクスという方による作品。

柱のヒビに注目。これ、風化を表現するためにあえてヒビをつけてるんだよ....…なんで崩れないの。
柱のヒビに注目。これ、風化を表現するためにあえてヒビをつけてるんだよ….…なんで崩れないの。

作品2:カイロのバザールの風景

カイロの賑わっている市場が表現された作品です。ポーランド人のヴィアチェスラヴ・ボレツキという方による作品。

割れた壺を砂でつくるだと?
割れた壺を砂でつくるだと?

踊り子に注目する人びと。恐るべきリアリティ。
踊り子に注目する人びと。恐るべきリアリティ。

いちばん衝撃だったのは、布のひだ。砂と水だけでこんな表現ができるなんて。我らの小さい頃のお砂場遊びとは格が違う。
いちばん衝撃だったのは、布のひだ。砂と水だけでこんな表現ができるなんて。我らの小さい頃のお砂場遊びとは格が違う。

作品4:古代エジプトの生活

古代エジプト人の日常が表現された作品です。彼らは農耕中心の生活を送り、パンを主食としていました。イタリア人のミケーラ・チャピーニという方による作品。

パン生地をこねている....…これ、砂と水なんだけど....…。
パン生地をこねている….…これ、砂と水なんだけど….…。

作品6:アクエンアテン王とその家族

太陽神アテンを唯一神にしようとした、アメンホテプ4世とその家族を表現した作品です。アメンホテプ4世は、世界史にも出てくる有名な王様ですね。宗教改革をしようとして失敗した人です。そして、その美人妻、ネフェルティティも有名ですね。世界史の資料集には、彼女の胸像が載っているはずです。

ロシア人のドミトリー・クリメンコという方による作品。

素晴らしく均整の取れた構図。
素晴らしく均整の取れた構図。

作品11:ツタンカーメン王の墓の発掘

作品名の通りです。アメリカ人のトーマス・クォートによる作品。

この作品は鑑賞者より下に展示されている。秘密をのぞいてしまったような、そんな気分になる。壁一面に描かれた絵が素晴らしい。
この作品は鑑賞者より下に展示されている。秘密をのぞいてしまったような、そんな気分になる。壁一面に描かれた絵が素晴らしい。

作品12:アレクサンドリアの風景

地中海沿岸の都市、アレクサンドリアを表現した作品です。マケドニアのアレクサンドロス大王によって紀元前322年に築かれた都市で、名前は大王に由来しています。アレクサンドリアといえば、当時としては世界最大の図書館だったアレクサンドリア図書館があったことで有名で、本好きにとっては聖地のような都市です。なお、Amazonのスマートスピーカー「アレクサ」の名前は、知恵の宝庫であるアレクサンドリアに由来していると思われます。

アメリカ人のスー・マクグリューによる作品。

みんな大好き、アレクサンドリア図書館。
みんな大好き、アレクサンドリア図書館。

アレクサンドリア図書館は、その悲劇的な最期でも有名です。なんと、火災によって消失してしまったのです。本や図書館が燃える、というテーマは文学では人気で、私の大好きな小説家(であり記号学者)のウンベルト・エーコも『薔薇の名前』でそのテーマを扱っています。そして『薔薇の名前』を読んだ人は『書物の破壊の世界史』に辿りつくというわけです。

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作品17:クレオパトラ

その名を知らない人はいない、エジプトで最も有名な王ですね。その美貌を武器にして、時の様々な権力者に近づき、王朝を発展させようとしたが、最後には毒蛇に自身を噛ませて自害した女性です。背後の大蛇は、毒蛇を表しているのはもちろん、大地の象徴つまり女性性も象徴しているのではないかと思います。興味がある方は、過去記事大地の象徴としての蛇 を参照ください。

ロシア人のニコライ・トルコフによる作品。

妖艶な笑み。大蛇がいいね。
妖艶な笑み。大蛇がいいね。

作品19:ナポレオンの遠征とロゼッタストーンの発見

ロゼッタストーンは世界でいちばん有名な石ですね。大英博物館へ行くと、実物が見られます。石には、上から順に神聖文字(ヒエログリフ)、民衆文字(デモティック)、ギリシア文字が記載されており、すべて同じ内容となっています。この石の解読によって、それまで謎につつまれていたヒエログリフの研究に光明が差したのでした。ちなみにロゼッタストーンを解読した人はシャンポリオンです。私が受験した当時、世界史のテストでめちゃくちゃ出題率が高かったです。なお、シャンポリオンとセットで、楔形文字が彫られたベヒストゥーン碑文の解読者、ローリンソンも出てきます。

ラトビア人のアグネス・ラトジーテによる作品。

ロゼッタストーンを砂像でつくろうなんて正気か。すごい、本物そっくり。
ロゼッタストーンを砂像でつくろうなんて正気か。すごい、本物そっくり。

拡大。すごすぎる……
拡大。すごすぎる……

そんな感じで、砂像を大満喫しました。作品が変わるたびに来たいくらい、よかったです。日本で行くべき美術館TOP10に入ると思います。近くに行く際にはぜひ寄ってみてくださいね。

ミュージアムショップでは、エジプトにちなんだグッズが売られていました。私と友達はパピルス製の栞を買いました。ポスター大のパピルスの絵も売っていて、心惹かれましたが、うちの居間にはかなり大きなパピルス製の「死者の書」が飾られているので、これ以上エジプト要素を増やさなくてもよいか、と思ってやめました。いつかエジプトに行きたいという想いがますます強くなりました。

今夜の宿へ

私と友達には、ある計画がありました。それは、夜の鳥取砂丘に入り、星空を見ることです。

そこで、今夜の宿は砂丘から近い場所に予約しました。とはいえ、歩いて20分くらいあるので、キャリーケースをガラガラしながら、ひたすら歩きます。車がない旅は不便だって?そんなことはないですよ。チャトウィンは、「世界は徒歩で旅する人にその姿を見せるのだ」と言っていますしね。

「なぜ君は歩いているんだ」老人が私にたずねた。「馬に乗れんのかね」ここらあたりの人間は歩く者を嫌う。彼らは歩いている人間を頭がおかしいと思う。

「馬には乗れます」私は言った。「でも歩く方が好きなんです。自分の足のほうが信頼できます」

ブルース・チャトウィン『パタゴニア』、河出文庫、2017年、153頁。

そうして歩いていると、交差点の看板に、「白兎海岸」という案内がありました。はっ……白兎って、もしかして日本神話の因幡の白兎に由来している?鮫を騙した兎が、鮫に噛まれて泣いていると、大国主がやってきて、ガマの穂を敷いた場所に寝かせてやり、傷を癒してあげる話です。(子供の頃に読んだ、にゃんたんのゲームブックシリーズの『たいけつ!ヤマタノオロチ』からの知識)

後で調べて見ると、やはり白兎海岸は、因幡の白兎の伝説が残る浜辺でした。出雲大社をはじめとして、山陰地方は日本神話に由来する土地が多いのですね。

多鯰ヶ池
多鯰ヶ池

多鯰ヶ池を右手に見ながら、キャリーケースを引いて歩きます。こっちにも梨畑、あっちにも梨畑。ついに宿に辿りつきました。チェックインを済ませて、夜ご飯を買いに市内へ行こうと、バス停に行きます。ところが、バスがない……!

結局、宿のオーナーさんのお言葉に甘えて、車でコンビニまで連れて行ってもらうことにしました。「コンビニもねえ、車だと5分なんだけど、歩くと30分くらいかかるんだよね」。ですよね。

車中でいろいろとお話していると、「この辺は熊はでないけど、鹿と猪が出る」とのことでした。友達が、「熊鈴もってくればよかった。猪には会いたくない」と言います。かくなるうえは、歌いながら歩くしかないということになり、日が落ちたあと、砂丘までの真っ暗な道を、「アルプス一万尺 」を歌いながら歩きます。

夜の砂丘

夜にかけて雲が出てくるという予報だったので心配していましたが、きれいに星空が見えました。真っ暗な砂丘を、懐中電灯の明かりのみを頼りに進みます。「いまどのあたりにいると思う?」「さあ」「ちょっと(地面が)平らになってきた?」「もうすぐ坂道じゃない?」などという会話を交わしながら、視覚以外の4感覚を頼りに、昼間も登った海に面した丘に登りました。

登ってみると驚いたのは、海岸線に、昼間は見えなかった灯台の明かりがたくさんあったことです。

海岸線。灯台の明かりで明るい。
海岸線。灯台の明かりで明るい。

丘の上で、レジャーシートを引き、星空を見ながら寝そべります。丘の上なので、風がびゅんびゅん吹き抜けて寒く、厚着をしてきて正解でした。星はたしかに、都会よりはずっと綺麗でしたが、天の川までは見れませんでした。

1時間半くらい、そうして星空を楽しみ、来た道を帰りました。星座はよく分からなかったけれど、とりあえず一番輝いていた星が木星である、ということは分かりました。

おわりに

今回は鳥取砂丘周辺を旅した話でした。1日目から、自然も芸術も大満喫です。次回は倉吉へ行った話をします。

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サラミスの海戦のようす。19世紀、Walter Crane。「中世ヨーロッパの道」100記事目記念前のページ

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