はじめに
2023/5/13(土)に、はじめての読書会を開催しました。その記録を本記事に記載します。
なぜ読書会をやろうと思ったのか
学生の頃、気に入っていた英文学の授業がありました。その授業は英文学専攻の学生の必須科目になっていて、内容は有名な英文学の作品を歴史が古い順に触れていく、というものでした。(わたしは歴史学専攻の学生でしたが、面白そうな授業は片っ端から受けていました)
その授業の担当教授は、学生と相互にコミュニケーションを取ることを大切にしていました。そのため、授業の最後に各学生からコメントペーパー(その日の講義の感想等を記載する紙)を回収し、次の講義の冒頭で一部のコメントをピックアップしてまとめた紙を全員に配ってくれました。目的は、他の学生が授業でどんなことを感じたかを、全員に共有するためです。
私は、他の学生のコメントを見て、他の人が自分とは全く異なる着眼点を持っていたり、考えを持っていることを知りました。そして、文学を楽しむのは一人でもできるけれども、他の人の考えを聴くと他の視点も持てて、さらには考えを昇華させることができて、より楽しめることを知りました。
そのため、大学を卒業してからも、あの授業のように他の人の考えを聴いたり、議論したりする機会があればいいなと思っていました。今回の読書会は、そのような想いから企画するに至りました。
なお私は他専攻の学生にも関わらず、最後の授業のときに「いつもあなたのコメントを楽しみにしていました」とその英文学の教授に言われ、なぜか今でもFacebookでつながっています。教授に勧められて読んだ本にサマセット・モームの『月と六ペンス』があります。教授LOVE。
5月読書会の内容
今回のテーマは「初夏に読みたい小説/エッセイ」でした。会の流れとしては、テーマに沿った本を1人1冊ずつ紹介いただき、その本について話し合うという流れです。
読書会を開催しようと思ったときに読んだネットの記事に、「はじめての読書会では参加希望者がゼロの場合があるので、あらかじめ根回しして誰か一人は参加者を確保しておきましょう」と書かれていました。なので、全く根回しをせずにTwitterで参加者を募集したときにはドキドキしました。しかし初回にもかかわらず、3名の方に参加表明をいただきました。参加いただいた方、本当にありがとうございます。
今回の参加者はFFさんに限定させていただきました。普段Twitter上でたくさんコミュニケーションを取らせていただいた3名の方でしたが、実際にお話するのは初めてで、緊張してしまいました。ですが会が進むにつれて、皆さん緊張がほぐれてきて、笑いも飛び交うようになってよかったです。
紹介された本
「初夏に読みたい」のテーマで紹介された本について、順番に記載していきます。
上橋菜穂子『精霊の守り人』(軽装版)
言わずと知れた日本産のファンタジー小説です。物語が夏に始まって夏に終わるところや、夏至の祭が物語のキーになってくるところに、初夏らしさを感じるとのお話でした。『精霊の守り人』は文庫や単行本もありますが、紹介者さんのオススメは軽装版です。ジブリ「天空の城のラピュタ」などのアニメーションを手掛けた二木真希子さんの挿絵が入った版で、二木さんの童話調な絵が作品世界とマッチしています。
紹介者さんの話では、文化の描写、食べ物の描写、バトル描写が特に優れているとのこと。また他の方から、「日本で最高のファンタジー」との意見も。最近巷に出回っている、テンプレ化されたラノベファンタジーとは全く異なる、「本格ファンタジー」ということで意見が一致しました。
~sousouのコメント~
『精霊の守り人』は文庫版1巻の途中まで読んだきり、止まっています。これを機に再チャレンジしたいです!
ピーター S.ビーグル『最後のユニコーン』
アーシュラ・K・ル=グウィンの『ゲド戦記』と同時期に出版された幻想文学だが、『ゲド戦記』とは全く異なる楽しみ方ができる本とのこと。森などの緑の描写が多いところが、初夏にぴったりとのお話でした。紹介者さんは、ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』のような言葉遊びや、作中で語られる物語論に魅力を感じるとのこと。また、結末がとても美しいという点で、他の参加者さんも同意していました。
ユニコーンという存在自体が幻想的、という話からユニコーンガンダムの話になりました。参加者には水星の魔女が初ガンダム勢と、歴戦のガンダム勢がいまして、歴戦のガンダム勢によるとユニコーンガンダムはとてもよいらしいです。
~sousouのコメント~
ずっと気になっているけれど、絶版のために手が出せない小説。日本語版の中古は値段が高騰しているため、仕方なく英語版を買ったのですが、まだ読めていません。読みたい!
2023/10/9追記:ハヤカワ文庫から新版として出版されて激熱です!しかも表紙絵はファイナルファンタジーのイラストで有名な天野喜考です。
折口信夫『死者の書』
日本でおそらく最も有名な民俗学者、柳田国男の弟子にあたるのが折口信夫。最近はNHKの教養番組「100分de名著」にて、折口信夫の『古代研究』が取り上げられたので、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。こちらの小説は、折口信夫のほぼ唯一の小説といってよいもので、初夏に行われる「練供養」という行事が出てくることや、したしたと降る雨の描写が、今の季節にぴったりとのことです。擬音語などの言葉遣いが本当に素晴らしいそうです。
『死者の書』は様々な出版社から出版されていますが、紹介者さんの一番のオススメは岩波文庫版。表紙は古代エジプト人がミイラと共に埋葬した「死者の書」の絵になっていますが、内容には関係ないとのことです。
~sousouのコメント~
日本人として、日本の古代文化がベースになった小説は読みたいものです。難しそうだけどチャレンジしたい!
エリーナ・ファージョン『リンゴ畑のマーティン・ピピン』
こちらは私が紹介した本となります。6人の娘たちの陽気な雰囲気、木漏れ日さえ感じそうなリンゴ畑の描写に初夏を感じます。旅の歌い手マーティン・ピピンから語られる、6つの恋物語は「むかしむかしあるとことに……」から始まる童話調で、どのお話もロマンチックです。お話の合間に、娘たちはブランコで遊んだり、お花遊びをしたりして、新緑がまぶしい初夏にぴったりな明るく若々しい小説となっています。
そのほかに紹介された本
1人1冊の本を紹介したあと、時間があまったので、その他に紹介したい本を挙げていただきました。
アリ・スミス『五月 その他の短篇』
樹に恋をしてしまった女性の話が5月にぴったりとのこと。私も最近Twitterでこの本をよく見かけていたので、気になっていました。なぜ5月=樹なのかは、西洋における樹木信仰のなごりを参照ください。
川上未映子『夏物語』
私は無知で知らなかったのですが、川上未映子は世界的に注目されている作家だそうです。その作品の中でもこちらは夏にぴったりとのこと。
文學界(2023年5月号)
すごい!雑誌にまで手を伸ばしている参加者さんがいました。特に注目なのは『ラピスラズリ』で有名な山尾悠子の短編で、幻想文学好きの方はオススメとなっています。5月号なのでまだぎりぎり買えますね。
おわりに
今回は5月読書会の記録を書きました。本好きな人と本の話をできる機会など、日常生活でほとんどないのでとても楽しかったです。参加いただいた方々につきましては、本当にありがとうございました。皆さんがあっての読書会でした!
次回の読書会は6/10(土)を予定しています。今度は課題本型の会で、課題本はヘルマン・ヘッセの『郷愁』となります。興味のある方はTwitterをご確認ください。
以上です。またよろしくお願いいたします。