四国村ミウゼアム【香川県2024】

はじめに

淡路島旅行【兵庫県2024】の記事で話した通り、わたしは四国に住んでいるのですが、今年のGWは兄2人が四国に遊びにきました。

そこで兄たちと共に、香川県屋島にある四国村ミウゼアムに行ってきました。今回は屋島へのおでかけについてつづります。

屋島の基本情報

四国村ミウゼアムは、屋島の山のふもとにあります。屋島はかつて、その名の通り「島」でしたが、江戸時代に埋め立てされて香川県・高松市と陸続きになりました。

もと東日本民からすると、西日本は(かつての都があるため当然なのだが)神話や歴史ゆかりの地が多くて驚きます。例えば、このまえ旅行した淡路島も、国生み神話で最初に生まれたとされる島でした。屋島は、源平合戦の名逸話「扇の的」が生まれた地として知られています。

『平家物語絵巻』巻十一より屋島の戦い「扇の的」。那須与一によって射られた扇が、宙に舞っている。

「扇の的」の逸話は次の通りです。屋島の戦いでの休戦中、平氏の小舟に若い女房が現れました。女房は竿の先に扇を立て、「この的を射てみよ」と源氏を挑発します。射なければ面目がたたないと思った源義経は、弓の名手を探します。そこで指名されたのが、下野国(現在の栃木県)の武将、那須与一なすのよいちでした。果たして、那須与一は扇の的を射ることに成功しました。その見事な腕前に、平氏は船端を叩いてどよめいたと言われます。

屋島の山頂には、四国八十八箇所(空海ゆかりの88箇所の仏教寺院)第八十四番札所である、屋島寺もあります。屋島寺の開祖はなんと、航海で失敗を重ねて、盲目になりながら日本へ渡来した唐の僧侶・鑑真がんじん(688?-763年)です。世界史畑のわたしでも知っている、日本において超有名なお坊さんです。

さて、屋島は高松市から好アクセスの場所にあり、島であるにもかかわらず、電車とバスで行くことができます。琴電屋島駅で降りると、GWということもあり、たくさんの観光客が屋島山頂へ向かうバスを待っていました。われわれの行き先は山の手前の四国村ミウゼアムです。200円を払って、バスに乗り込みました。ところが、交差点を一つ曲がっただけで、四国村ミウゼアムに着いてしまいました。じつは駅から四国村までは、徒歩で5分くらいの距離でした……。バスに乗る必要なかった!

四国村

入口近くにあるカフェ。本物の洋館を移築したもの。

四国村は、江戸時代から大正時代に建てられた、四国四県の建物33棟が移築復元され、展示された野外博物館です。村のようになっている山肌を歩くことで、昔ながらの四国の暮らしぶりを目で見て知ることができます。

村の景観を損ねない、石造りの階段をたくさん登り下りするため、行く場合には歩きやすい運動靴が必須です。入場料は1600円で、少し高く感じますが、すべて見て回ったあとには納得&満足の値段でした。

実際のかずら橋の2/3サイズの橋。

入場してすぐに、かずら橋がありました! 本物のかずら橋は、徳島県の山のなかにあり、こちらはそれを模してつくったものとなります。昔、家族で本物のかずら橋に行こうとして、ものすごい山道を通ったことがありました。そのときは運転していた父以外、全員のりもの酔いで吐いたのでした(それ以降、山道がトラウマである)。結局その日はかずら橋へ行くことを断念して、また別の機会に行きました。ところが私の頭には、肝心のかずら橋の記憶が残っていません……。なお、かずら橋に行くにはぐねぐね山道ではない、もっと整備された道があるようです。

渡ってみると分かりますが、渡された木の幅がおのおの10cmほどしかなく、そこに自分の足がのるよう歩かなければなりません。普通の人の足は20cm以上あるので、足の半分以下しか踏み場がないということです。適当に歩けばもちろん踏み外すため、一歩一歩にとても神経を使いました。しかしこんな怖い橋でも、ないよりははるかにましなのです。なぜなら水場を渡る行為にはつねに命の危険がつきまとうからです。世界各地にみられる、水の精に供物を与えるという風習は、水場を渡るときに流され、命を落とす人が多かったことを物語っています。

小豆島農村歌舞伎舞台。小豆島から移設したもの。

小豆島しょうどしまはおそらく、瀬戸内海にある島のなかで、一番有名な離島だと思います。オリーブオイルや醤油を生産していることで知られ、以下の理由で移住先にも人気です。

  • 高松港と船で60分で行き来できる(つまり1時間あれば繁華街に出れる)
  • 中学校・高校などの社会生活を送る上で基本的な施設がある
  • 観光客が多いため働き口も多い

私も2回ほど行ったことがあり、観光地として見どころがたくさんあります。瀬戸内海の島に行ってみたい人にまず勧めたい島です。小豆島の北側エリアに、寒霞渓かんかけいという、国指定の紅葉の名勝があり、そこにいつか行ってみたいです。

寒霞渓の景色。

さて、どんどん歩いて行きましょう。

5月なので、歌舞伎舞台の観覧席にはこいのぼりが。さっそく階段をたくさん登ることに。
現代アートがそこかしこにある。

藤棚がきれい。

民家。屋根がかやぶきである。

神棚。天井が高いため、天井までの空間すら神棚の領域に思える。現代の家にはない感覚である。

かまど。

火口が居間側に向いているため、土間におりずに、火を入れられるようになっている。

別の民家。土間に和紙の原料(コウゾやミツマタ)を蒸す大窯がある。天気に左右されずに蒸せるメリットがある一方で、煙が家に充満するデメリットがあった。しかし生きるためには稼がなければならない。

土間から見た屋内。どの民家も、だいたい2部屋ある。手前の部屋がお客さん用。

縁側から見た屋内。

昔ながらの民具もたくさんある。漫画や小説を書く人の資料になりそう。

砂糖しめ小屋。円形になっている理由は、牛に円形に歩いてもらい、サトウキビ絞り器を動かすためである。

砂糖しめ小屋の屋内。棒に牛をつないで、ぐるぐる歩いてもらう。

周囲の自然も豊かで、本当に山里にいるような気分になる。

山を歩いていると民家が!の気分が味わえる。

四国村ギャラリーにある庭園。安藤忠雄が設定した。

棚田をイメージしているのかもしれない。

庭園には薔薇の花も。

茶堂と呼ばれる、村の境や峠に設置された小さなお堂。かつては四国の村々にあったが、現存するものは非常に少ない。信仰の場である他、通行人がお茶を飲んで休める場所でもあった。

だいぶ歩いて疲れてきた。まだまだ道はつづく。

大久野島灯台。

灯台守が暮らした家のひとつ。灯台が整備された当初、灯台守は西洋人がやっていたため建築が西洋風(これはギリシア風)である。やがて日本人の灯台守が輩出されるようになると、建築は和室が中心になる。時代の異なる3つの灯台守の家があり、比較できる。

灯台守がどうやって飲み水を確保していたかというと、屋根に落ちた雨水をタンクに溜めるのである。しかし雨が降らない日々が続くと、要請して船で水を届けてもらった。

何の花だろう。かわいい。

水の湧き出る広場。木々の緑を映して美しい。

「隠居屋」と呼ばれる、長男夫婦が結婚すると親夫婦が隠居する家。徳島県祖谷地方では、古くから隠居制度があった。主屋よりも規模が小さく、造りも簡素である。嫁がシュウトメと一緒に暮らさないで済む制度があったとは驚きである。

警鐘台。火事が起きたときなどにのぼって、様子を見るのかな。

われわれは、屋島の頂上に行くバスの時間を気にしていました。乗ろうとしているバスを逃すと、次は二時間後なのです! そのため終盤はあまりゆっくり観られず、てきぱきと行動していました。おなかがすいて、お昼ご飯にしたいけれど、屋島の頂上に行ってからだね、と話し合います。

ちなみに、四国村ミウゼアムを出たところにあるうどん屋「わら屋」は長蛇の列でした。食べログの2024年百名店に選ばれている、有名な讃岐うどん屋みたいです。

屋島頂上

無事にバスに間に合い、屋島の頂上にやってきました。頂上にはとても広い駐車場がありますが、GWとだけありほぼ満員の状態のようです。屋島の頂上は広大で、水族館や見晴台など様々な施設があります。どこに行くにもまずは屋島寺を通ります。

屋島寺にはたぬき信仰がある。右のたぬきさん。

左のたぬきさん。

たくさん歩いて、おなかがすいた……! のでまずは食事処を探しました。事前に、茶屋があることを調べていたため、そこに行ってみます。ところが、店の入口にあるメニュー表をみると、いちばん安いハンバーグランチで1600円!!? 高すぎない!? 円安と外国人観光客向け価格の波が、屋島まできているようです。実際、外国人も含めて、屋島を散策している観光客はたくさんいました。

入ろうとしていた茶屋(左の建物)。

しかも、高級茶屋の店内は人で溢れていて、いくらか待たないと入れなさそうです。われわれは渋い顔をして、もっと安いお昼ごはんを探します。すると、最近できた展望施設「やしまーる」のなかに、カフェがあることが分かりました。

「やしまーる」。屋根瓦に使われているのは、庵治石(あじいし)と呼ばれる、墓石にも使われる超高級石である。庵治石は香川県が産地なのだ。

カフェのメニューを見ると、一般的なカフェの値段で許容範囲でした。お昼ごはんになりそうなのは、ピザトーストとドリンクのセットである「やしまーるセット」850円のみだったため、3人ともそれを注文します。

やしまーるセット3点。(笑)

わたしはこれで足りるけれど、兄たちは大丈夫なのか? と気になります。せめて夜ごはんはおいしいものを作ってあげよう。デザートとして、中にアイスが挟まった「たぬどらやき」もみんなで食べました。加えてわたしは、各地の蜂蜜を食べ比べるのがちょっとした趣味なので、屋島で採れた蜂蜜を買いました。

たぬどらやき。屋島寺のたぬき像にあやかっているのだろう。

天気がよくて、遠くの山までくっきり見える。

瀬戸内海の島々もよく見える。

じつは事前に、「屋島の水族館に行ってもいいね」などと話していましたが、四国村で思ったより体力を奪われたため、「もう帰ろうか」となりました。山頂から下るバスに乗ろうと、バス停に向かうと、なんと40人くらいが列をつくっていました。GWおそるべし! バスに乗れなかった場合、次のバスは1時間後だから、下まで30分かけて歩こうか……と覚悟していましたが、なんとか乗れました。その日の夜はハンバーグを作りました。おいしかったです。

懐っこく寄ってきた野良猫。あくびをする前の瞬間。

おわりに

今回は屋島のおでかけについてつづりました。屋島には何度か行ったことがありますが、水族館にはいまだ行ったことがないため、いつか行ってみたいです。また、四国村も最後は駆け足で見たため、違う季節にまた来てもいいなと思います。山の自然もとてもきれいなので、紅葉の時期もよさそうです。

以上、お読みいただきありがとうございました。

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