前回の記事西洋史におけるジプシーにて、淡路島へ旅行してきたことに少し触れました。淡路島は、日本列島の国生み神話にて、イザナキとイザナミが最初に創造した島とされており、神話ゆかりのスポットが多々あります。
今回は5月に訪れた、淡路島への旅についてつづります。
淡路島の基本情報
淡路島は、本州と四国の間にある島で、島といってもかなり大きな島です。実際に地図を見てみると、湾を挟んで向かい側の大阪府の、繁華街と同じくらいの面積があります。
淡路島は、大鳴門橋で四国と(1985年完成)、明石海峡大橋で本州と(1998年完成)とつながっています。そのため淡路島へは、陸路で気軽に行くことができます。淡路島が四国・本州とつながった最も大きな意義は、四国に住んでいる人が、神戸や大阪といった繁華街に、気軽に行けるようになったことだと思います。淡路島はいわば繁華街のベッドタウンであり、四国の人が繁華街で商売をするための通り道とも言えるでしょう。
一方で、休日になると大阪ナンバーのバイクや車が四国を走っているのを見かけるので、淡路島は、繁華街に暮らす人が田舎へドライブに行くための通り道とも言えます。
四国は三つの橋で本州とつながっている。
ちなみに、四国と本州を結ぶ陸路は、現時点で三つあります。四国の人にとって、陸路で本州へ行くルートは、以下の通りです。
- 徳島県から淡路島を通って兵庫県に行くルート
- 香川県から瀬戸大橋を通って岡山へ行くルート
- 愛媛県からしまなみ海道(複数の橋と島を経由する)を通って広島へ行くルート
しまなみ海道は、サイクリングにうってつけの観光地で、聞いたことのある方も多いと思います。しかしどのルートも海の上を走ることになるので、車や電車(瀬戸大橋のみ電車が走る)から、瀬戸内海の多島美を見ることができます。
念願の田舎暮らし!?
私は生まれも育ちも関東で、東京の大学を卒業して東京の会社に勤務していました。しかし今春から四国に暮らしはじめました。理由は、簡単に言えば務めている会社の仕事内容に嫌気がさしたからで、「いっそ会社を辞めて念願の田舎暮らしをしようか?」という思考を経て四国に移住しました。(気軽に書いているけれど熟慮した結果である)
移住先を四国にした理由は、主に以下3つの理由があります。
- 父の故郷であるため頻繁に訪れていて、少しばかり土地感があった
- 父の実家に空き部屋があり、私がそこに住む許可が下りた
- 実は両親も数年前に四国(父の実家とは別の家)に移住し、スローライフを送っている。そのため、両親に何かあったときにすぐに訪ねられてよいと思った
思えば、新卒で会社員になってからX年間、組織の駒として責任感をもって働き、税金をたくさん納めて数百万円の奨学金もきっちり返済してきました(まだ少し残っているけど)。お金に余裕ができた今こそ、組織に属さない期間が1年くらいあってもいいはず、と思いしばらく自由を満喫する予定です。
会社を辞めるときに「四国からのリモートワークを許可するから続けてよ~」と引き留められましたが、転職して2社目の会社だったため1社目ほど愛着はなく、断ってしまいました(仕事内容が嫌になっただけで、上司や同僚はとてもよい人たちでした。みんなに幸せあれ)。というわけで、あらゆる組織での人材不足が深刻ななか申し訳ありませんが、しばらく無職で過ごす予定です。
いざ淡路島へ
そういうわけで、現在四国に住んでいるため、淡路島には気軽に行けます。とはいっても、首都圏に住んでいた私は今まで車を所持したこともないし、運転したこともないため(運転免許は持っている……)、四国に住んでいる友人の運転により、淡路島へ出発しました。車に乗ってしばらくすると、聞き覚えのある音楽が……? これはドラクエの戦闘音楽ではないか? と思って友人に尋ねると、「今日はドラクエ記念碑に行くから!」とのことでした。
そうだ、イザナキとイザナミの神話色が強すぎて忘れていたけれど、淡路島はドラクエシリーズのシナリオ・ゲームデザインを手がけている、堀井雄二の故郷でもあり、その功績をたたえたドラゴンクエスト記念碑があるのでした。友人はドラクエシリーズを全てプレイしている大ファンで、シリーズのうちお気に入りの曲だけを集めたサウンドトラックをつくっているのでした。
私は「天空シリーズ」と呼ばれるドラクエ4, 5, 6のみをプレイしたことがあり、とくに結婚相手として、幼馴染のビアンカか豪商の娘フローラかのどちらかを選択できる、「5 天空の花嫁」が好きです。ドラクエのBGMを聞きながら、この曲はあの場面で流れる音楽だ、などと盛り上がっていると、淡路島へつながる大鳴門橋に差し掛かりました。
鳴門は、ラーメンに添えるうずまき柄のかまぼこの名前の由来とされている通り、渦潮が発生する海峡です。いつでも見られるというわけではなく、潮の流れが入れ替わる時に発生します(1日2回)。さすがに通りがけに渦潮を見ることは(危ないし)できないため、観賞するなら橋の近くに車を停めて、クルーズ船などに乗って観るのが定番です。
沼島
橋を渡り、淡路島へ入ると、島とは思えないほど栄えていました。海に囲まれた離島は、スーパーや信号がなかったりするものですが、淡路島は陸路で本州・四国とつながっているため、チェーン店もたくさんあり、普通の一般的な街でした。淡路島の特産品は玉ねぎであるため、新玉ねぎの季節である今は、見渡す限りの畑に玉ねぎが埋まっていました。
私たちは、イザナキとイザナミが国造りをする際に、最初に降り立った島といわれる、沼島へ行くため、船着き場に向かいました。イザナキとイザナミ(※)は、国造りのために「天の沼矛」という道具を神々から賜りました。二神が天の浮橋に立って、下界に沼矛を差し入れ、「コヲロ、コヲロ」とかき混ぜ引き上げると、矛からしたたり落ちたシオが積もって島になりました。その島は「おのころ島」と呼ばれ、二神はおのころ島に降り立ち、日本国土を創っていったといわれます。その島が沼島とされています。
※イザナキノミコトとイザナミノミコトは、よく知られたアマテラス、ツクヨミ、スサノオなどの神々の父母である。神道の主神・太陽神アマテラスがまつられた最も有名な神社が、三重県にある伊勢神宮である。
途中にとんでもない山道(ぐねぐね道)を通るはめになりましたが、なんとか乗ろうとしていた船の時間に間に合いました。平日だったため、船の乗客は少なめでした。沼島へは淡路島本土からたった10分で行けるうえに、船の本数も1日10便と多めなので、離島で暮らしたいけど利便性も捨てがたいという人には、なかなかよい島だと思いました。
まずは港近くにある、沼島八幡神社へ行ってみます。八幡神社は全国どこでもある神社で、五穀豊穣の神さまがまつられています。八幡さまは海を司るという説もありますが、海には日本人が主として食してきた魚がいるので、やはり豊饒の神さまなのでしょうか。
つづいて、沼島に行ったら絶対に訪れようと思っていた、山の上のおのころ神社へ向かいます。イザナキとイザナミの二神をまつった、全国でも珍しい神社です。実際に行ってみて気づいたのですが、歴史ある神社のわりには、階段や祠などが新しいです。それもそのはず、地元の人は山全体を「おのころさん」と呼び、神体山として捉えています。そのため、建物は最近になって建てられたと考えられます。
おのころ神社の祠までは、わりと険しい山道を通るため、歩きやすい服装と靴がよいでしょう。祠が近づいてくると、整備された階段が現れます。
さて、山を下りたところでお昼時になったため、島で四軒あるうちの一軒の飲食店に入ります。「水軍」というお店で、底曳き網漁師さんが経営している海鮮料理屋です。海鮮丼を注文しました。
お魚はもちろんおいしかったですが、感動したのは、右上の器に入っている生わかめです。生わかめとは乾燥させていないわかめ、つまり取りたてを洗ったのみで提供しているわかめです。食感と肉厚さが乾燥わかめと全くちがいます。おそらく人生においてはじめて食べました。
こちらに移り住んでから、スーパーで売っている刺身でさえ、東京とはぜんぜん違う新鮮さなので、おいしいお魚が日常的に食べられて本当に嬉しいです。やはり地産地消は正義……!
淡路島へ戻る船の時間まで、時間があったため、港近くにあるカフェに入りました。県外から沼島へ移住した方が経営しており、店内ではアイルランド歌手のエンヤの歌が流れていました(映画『ロード・オブ・ザ・リング』のMay It Beなどを歌っている方)。
メニューには、ユニークな名前のフロートがあったため、私たちは「イザナキフロート」と「おのころフロート」を注文しました。写真的に映えそうなのは「国生みソーダフロート」で、青いソーダにバニラアイスが浮かんでいるものでした。
ストローを天の沼矛に見立てて、かき混ぜながらいただきます。私が注文したおのころフロートは、神話ゆかりの地らしく甘酒が入っており(なぜなら酒はもともと、神に奉納するためにつくられた)アイスの上にはショウガがのっていました。
船の時間まで店内でのんびりしていると、「沼島のわかめ販売中」の張り紙が目に入りました。先ほど食べた、あの生わかめです! お店の人に訊くと、ちょうどわかめが取れる時期なのだそうです。淡路島から帰ったあとに、両親の家へ行く予定だったため、お土産に買いました。
ドラクエ記念碑
船にのって淡路島へ戻った私たちは、堀井雄二の出身地である、淡路島の洲本市へ向かいます。洲本は温泉街として栄えている町で、旅館がたくさんありました。現代アートがある公園に入ってみると、ドラクエ記念碑がありました。友人いわく、像に採用されている剣と盾は、ドラクエ1 ,2, 3で武器として登場する、ロトの剣と盾だそうです。かっこいい。
記念碑のそばにあった、レンガ造りのカフェをのぞいてみると、ドラクエグッズが売られていました。しかしグッズは人気なようで、ほとんどが在庫切れのようです。悔しいので、急遽、テーマパークのドラクエアイランドに行って、お土産屋だけのぞくことになりました。ドラクエアイランドは今日泊まる宿から車で10分ほどの距離にあります。
ドラクエ記念碑を後にした私たちは、同じ洲本市にある「ペガサス」という名前のカフェに行きました。どのスイーツもかわいいです。私は淡路島牛乳をつかったプリンを食べ、友人はくまがのったクレープを食べました。
イザナキ神宮
洲本市を後にした私たちは、イザナキ神宮に向かいました。沼島にも、イザナキとイザナミがまつられた神社がありましたが、こちらの神宮も同じくイザナキとイザナミがまつられています。さすが、最初に生まれたとされる島・淡路島です。
拝殿。
ドラクエアイランド
本来は、イザナキ神宮でお参りしたあとは、宿へ向かう予定でした。しかしドラクエグッズが欲しくて、ドラクエアイランドへ向かいます。テーマパークは入場料がかかりますが、お土産売り場は無料で誰でも入ることができます。
お土産売り場は、誘惑の魔窟でした……。ぬいぐるみ、フィギュア、キーホルダーなど一般的なものから、Tシャツや生活雑貨まで売っていました。とくに、淡路島特産の玉ねぎとコラボした、オニオンスライムがかわいくて! どれもかわいくて目移りしてしまうのですが、悩んだすえに、私は以下2点をゲットしました。
一方で友人はというと、わたぼうのぬいぐるみ(かわいい)やオニオンスライムのTシャツ(かわいい)等々を購入し、計1万円以上はらっていました。お土産売り場にいる人を見ていると、どの人も平均で5000円以上は購入しているようでした。今回は時間がなくてアイランドまでは入れないけれど、今度訪れるときはアイランドに行ってみたいです。
絵島
ドラクエアイランドからほど近い宿で一泊した翌日、神戸側の島の先にある、絵島を訪れました。絵島は本土から30メートルくらい離れた場所にある無人島(岩壁)で、和歌をよむ名所として有名です。平安時代の僧侶・西行は、「千鳥なく 絵島の浦に すむ月を 波にうつして 見るこよいかな」という歌をよみました。絵島も、沼島と同じく「おのころ島」だとする説があります。
絵島は、淡路島と神戸(兵庫県)をつなぐ明石海峡大橋のすぐ近くにあります。後日、NHKの「新プロジェクトX」で、明石海峡大橋の建設話について観て、この橋が世界で2番目に長いつり橋だということを知りました(建設当初は世界最長)。
「橋」というのは、本当に偉大な人類の文明の産物で、それがあることによって、水の事故が圧倒的に減ります。世界各地にみられる、水の精に供物を与えるという風習は、水場を渡るときに流され、命を落とす人が多かったことを物語っています。このあたりについて詳しくは、西洋におけるアジール(例)の「渡し場」の章を参照してください。
こういうタイプの橋が、つり橋だと知らなかったもので、新プロジェクトXを観たときに、「鉄とコンクリートでつり橋なんてつくれるんだ!」とびっくりしました。人類の叡智はすごいですね。
この後、友人が岡山県にて用事があったため、明石海峡大橋をわたり、岡山まで行って、瀬戸大橋から四国に帰りました。船を使わずに本州と行き来できるなんてすごいな、と改めて思いました。
おわりに
今回は、淡路島への旅についてつづりました。
淡路島は広い島なので、今回訪れることができなかった場所もたくさんあり、また訪れたいと思っています。適度にのどかでよい島だと思いました。この後、両親の家に行くと「淡路島に行ったのに玉ねぎ買ってきてくれなかったの!?」と残念がられました。生わかめを代わりに差し出しました。おいしかったです。