はじめに
前回の記事では、直島へ行った話Part.1をつづりました。今回の記事ではPart.2をつづります。モネの絵画が展示されている、地中美術館に着いたところからです。
地中美術館
地中美術館に入るには、美術館から数百メートルほど離れた場所にある、チケットセンターに立ち寄る必要があります。チケットセンターは駐車場(駐輪場)の目の前にありました。事前予約のQRコードを係員の人に見せて、紙のチケットを発券していただきます。
チケットセンターの木陰にて、気持ちよさそうに昼寝をしている茶トラ猫がいました。首輪をしていたので、島民の飼い猫かな。どこから来たのかな。みんなに注目されて人気者でした。
チケットセンターから地中美術館へ行くまでの道は、「地中の庭」と名付けられた庭園になっています。手入れのいきとどいた、色とりどりのお花が美しいです。また、モネの睡蓮の池をイメージしたのであろう、池が多数ありました。
散らされた桜の花弁も美しく、よい時季に来たなーとつくづく思います。
しばらく坂を上ると、美術館の入口に着きました。残念ながら、入口から先はカメラ撮影がNGとなります。
チケットを見せて、敷地内に入ります。コンクリートの壁に蔦が絡まっており、美しいです。建物の内部は、壁が斜めだったり、階段があったり、砂利の庭があったり、四角く切り取られた天窓(外気直接、ガラスなし)があったりしました。光源は自然のままにまかせていて、太陽光以外の明かりはありません。建物の陰に入ると薄暗く、天窓がある場所に出ると明るくなります。谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を想起させられます。
明暗がめまぐるしく変わる、迷路のような建物内を進んでいると、クロード・モネの展示フロアに着きました。係員に、なぜか靴を脱いでスリッパに履き替えるように言われます。展示室に入ってみて、その理由が分かりました。
展示室の床には、2cm四方ほどの小さな、乳白色色のタイルが敷き詰められていました。しかも白を基調としながら、ほんのりピンクがかったタイルがあったり、青みがかったタイルがあったりして、まるでモザイクのようです。タイルはそれぞれが水の泡のようで、壁に飾られた『睡蓮』の絵とマッチしています。スリッパに履き替えるのは、靴でタイルを傷つけないためですね。
展示室に入ってまず視界に飛び込んできたのは、巨大な、本当に巨大な『睡蓮』の絵でした。わたしはパリにある、モネの『睡蓮』の大作を飾る目的でつくられた、オランジェリー美術館に行ったことがあります。さすがにそこまでの大きさではないですが、それを彷彿させるインパクトでした。こんなに巨大な『睡蓮』が直島にあったなんて、知らなかったです。これを拝めただけでも、この島に来たかいがありました。
しかし、驚きはそれだけではありませんでした。前方に1枚の『睡蓮』を認めながら部屋に入ると、なんと、左右の壁に1枚ずつ、入口側の壁左右に1枚ずつの、計4枚の追加の『睡蓮』が現れました。ひええ!つまり地中美術館は5枚も『睡蓮』を所有しているということです。すげえ。
モネの作品に大満足した後、他の芸術家の作品を鑑賞しました。どれも面白かったですが、特にジェームズ・タレルの『オープン・スカイ』という作品が気に入りました。それは一つの部屋が作品になっていて、正方形の部屋の天井に、四角く切り取られた本物の空が見えるものでした(ガラスなし)。鑑賞者は部屋の壁に沿って設置された石のベンチに座り、雲が流れていく様子を堪能できます。四角い空、というのが人工的でありながらも、雲が動いているので自然でもある、という点で不思議で面白かったです。
昼ごはん
そうこうしている間に、おなかがすいてきました。美術館内にカフェがあったので、そこで昼ごはんを食べることにしました。なんと、そのカフェはただのカフェではなく、展望台も兼ねていました。席が空くのを待つ間、暇なのでテラスに出てみます。ちなみに外の景色や食べ物は写真OKとのことでした。
素晴らしい天気!ありがとう天気!地中美術館は、自然光をたくさん取り入れているので、晴れた日に行くのがおすすめです。海の向こうもよく見えますし。たぶんここは、直島で一番景色がよい高台なのでしょう。わざわざそういう場所を選んで美術館をつくったに違いありません。
山ツツジもきれい。
テラスの右手に、階段を見つけました。降りていくと、屋外用の白い丸テーブルと椅子が置いてあります。ここでも食事ができるようです。ロケーションが最高ですね。
順番が回ってきたので、中に入って食事をとります。「せとか」という柑橘系の果物のジュースと、サーモンのハンバーガーを頼みました。とてもおいしかったけれど、ハンバーガーの量が少ないな….。あ、ストローが紙で環境に配慮されていました。
おなかが満たされたあと、他の作品も見て回り、最後にもう一度モネの展示室を観て感動を味わいました。いやあ、よかったです。地中美術館を訪れるためだけにでも、直島を訪れる価値があります。
サイクリング
美術館を出たとき、時間は13時すぎでした。とりあえず島を自転車で一周してみようと、現代アートの作品が密集している、本村エリアに向かってみます。来た道とは反対の道をまっすぐ進んでいると、分かれ道がありました。えー、どっちを選べばいいかな。迷っていると、李禹煥(リ ウファン)美術館の警備をしていたおじさんが近寄ってきました。
「どこへ行きますか?」
「本村です」
「じゃあ、左の道のほうが近いね。1.5kmくらいまっすぐ進んで、つきあたりを右に曲がれば本村に着くよ」
1.5kmの先にある「つきあたり」とは….…。まあ、それほど広い島ではないので、迷子になっても何とかなるでしょう。おじさん、ありがとう!出発!!
走りだしてすぐに、ダムのような場所を見つけました。斜面に生えた山ツツジがきれいです。先に観光客がいたので、何かあるのかな?と思って、斜面の上の道を歩いてみます。
右を向いてみると、下の広場に樹々が整然と並んでいます。花が終わりかけの桜の木ですね。はっ、ここへ来る途中に、「桜の宮殿はこちら」みたいな案内があった気がします。これは瀬戸芸の作品の1つのようです。
斜面の階段を降りてゆき、もう少し近づいてみます。
花は散りかけだけれど、きれいです。もう少し早い時季に来れば、もっときれいでしたね。
きれいに撮れたー!と母にみせると、「ゴッホのアーモンドの花みたい」と言われました。即そんな発想ができるなんて、さすが印象派愛好家(母は印象派の絵画が好き)。以下の絵ですね。たしかに似ている。
桜の宮殿の奥に進むと、違う木を使った、同じような広場がありました。私と母は、足元に咲いているスミレに興味しんしんです。かわいい。
別の場所でも話したかもしれないですが、『若きウェルテルの悩み』で有名なゲーテはスミレの花が大好きで、いつでもポケットにスミレの花を持ち歩き、その辺にまく変人おじさんだったそうです。花咲じじい….…。
ゲーテは内気な少女を思わせるこの花が大好きで、いつもその種をいっぱいポケットに忍ばせては、散歩の途中、道ばたにふんだんにまいてあるいた。
谷口幸男、福嶋正純、福居和彦『ヨーロッパの森から―ドイツ民俗誌』NHK出版、1891年、21頁。
桜の宮殿を後にして、道をまっすぐ進みます。視界に海が入らないので、海岸沿いではなく、島の内部を通る道を走っているようです。あたりには池と木しかありません。
1㎞ほど走ると、車通りがある道路に合流しました。先ほどおじさんが言っていた「つきあたり」はここっぽいです。そこで右に曲がると、にぎやかなエリアに入りました。役場や郵便局もあります。どうやら、本村に着いたようです。
本村では「家プロジェクト」と呼ばれる、空き家を改装した作品が多いようです。しかしあまり確認せずに来てしまったので、どれが作品かよく分かりません。また、中には入場料が有料の作品もあり、瀬戸芸パスを購入していない私たちは無料のだけ観たいかな、と思います。
どうしようか?と話し合い、なんだか暑くて疲れたので、鑑賞はやめてそろそろ港に戻ろうか、となりました。再び自転車に乗り、海沿いに道路を走ります。すると15時くらいに、フェリーが発着する宮ノ浦港に着きました。
早く着いたから、一本早いフェリーで帰れるかもね、と言いながら時刻表を見ると、、、17時まで高松行きのフェリーはないそうです。一本早いフェリーは14:30でした(←旅行はみっちり計画しないと気が済まない父から、のちほど「ちゃんと調べていかなきゃだめだよ」言われる)。いいの!仕事じゃないんだから、気ままに回るのが楽でいいの!
海風が強くて寒くなってきたのですが、幸い屋内の待合室があったので、そこでフェリーを待ちました。「瀬戸内ジェラート」という塩バニラのジェラートが売っていたので食べてみます。塩味が効いていておいしかったです。そしておなかがすいてきたので(やはりあの昼食では足りなかった)、からあげを買って食べました。
帰宅
今朝見たご当地ニュースで、「さぬきサーモン」という、香川で養殖しているサーモンが旬であるという旨が報道されていました。母と「食べたーい!」「今日の帰りにスーパーに寄って帰ろう」と話していました。フェリーの時間的にどうだ!?間に合うか!?というところでしたが、無事、さぬきサーモンを入手して帰ることができました。
さぬきサーモンには様々なハーブを混ぜた餌が与えられているようで、臭みが全くなく、おいしかったです。他に、スーパーで売れ残っていた弁当を、夜ごはんにしようと適当に買ったのですが、私がカゴに入れたしめ鯖寿司には誰も手をつけません。どうやら、父も母もしめ鯖が嫌いなようです。まじか……。わたし大好きなんだけど。というわけで、しめ鯖寿司はわたし一人で完食しました。
おわりに
今回は直島へ行ったお話Part.2でした。モネの絵画が好きだったり、建築に興味があったりする方はぜひ、直島の地中美術館へ行ってみてくださいね。島めぐりは非日常感が出てリフレッシュできるので、本当におすすめです。
次回は、玉藻公園と五色台へ行ったお話をしたいと思います。
それではまた。