マウルブロン修道院

ハイデルベルク→シュトゥットガルト【ドイツ2019-③】

はじめに

ドイツ旅行3日目の行程は、下図オレンジ線の通りです。
ハイデルベルクを出発し、シュトゥットガルトに泊まります。
旅の基本情報、全体の旅程などはドイツ旅行導入を参照してください。

この日の目的はシュトゥットガルト近郊にある、マウルブロン修道院へ行くことです。修道院は俗世から離れることを目的として建てられるので、一般的に人里離れた辺鄙な場所にあります。

移動手段と所要時間は以下の通りです。

出発地到着地移動手段所要時間
ハイデルベルク
Heidelberg
シュトゥットガルト
Stuttgart
鉄道1H

シュトゥットガルト駅へは高速鉄道で行きます。
そこから普通電車でミュールアッカ―駅へ行き(約20分)、バスで修道院へ向かいます(約15分)。

ハイデルベルク→マウルブロン修道院へ

シュトゥットガルトはケルン並みに大きな町で、車や人の往来が多くにぎわっています。

この日はシュトゥットガルトに泊まる予定だったので、マウルブロン修道院へ行く前に駅のコインロッカーに荷物を入れました。ドイツの駅にある多くのコインロッカーは24時間ごとに料金が増しますが、シュトゥットガルトのロッカーは1時間ごとに料金が増しますのでご注意を。

※手荷物用の小さなロッカーであれば24時間課金制ですが、キャリーケース用の大きなロッカーは1時間課金制のものしかありません(2019年9月時点)。

観光でシュトゥットガルトというと、ドラクエで天空の城のモデルとなった、ホーエンツォレルン城が有名です。史料によると最初の城は11世紀に建てられたと記載されていますが、現在の城は3代目で、1867年に完成しました。できれば行きたかったスポットですが、再建されず当時のまま残っているマウルブロン修道院のほうが個人的には魅力的なので、今回はそちらに行くことにしました。

ミュールアッカー駅
ミュールアッカー駅

シュトゥットガルトから電車に20分ほど揺られ、ミュールアッカー駅に着きました。カフェが1軒とコンビニのような店が1軒だけある、小さな駅です。ここから700番のバスに乗り、マウルブロン修道院へ行きます。

バスターミナルへ行くと、ちょうど700番のバスが走りだしたところでした。手を振ると、親切にも止まってくれます。

私「大人2名です」
運転手のおじさん「(ドイツ語)」

ん!?何か訊かれましたが、ドイツ語は分かりません……。バスに乗るための手続きが他にあるようです。言葉が通じずおじさんが困っています。バスの運行に迷惑なので、一旦降りようかと思案します。何だろう、他にバスに乗るときに必要な情報って……「Where will you go?」

なんと、最前列に座っていた美人のお姉さんが通訳してくれました。そうか、行先によって料金が違うのですね。「マウルブロン修道院」と答えると、頷いてチケットを2枚発行してくれました。

走りだしてから、お姉さんと運転手のおじさんが何やら話しています。女性がわれわれのほうに振り返り、「○○で降りるのよ」ごめん、地名が聞き取れなかった……。「分かった、バス停に近づいたら教えてあげる」お姉さん、どこまでも天使。陽気なおじさんが大声で “Sorry, I don’t speak English !!”と言います。

さて、Maulbronn Altes Stadtbadというバス停で降りました。運転手のおじさんが手振りをまじえて「この道をまっすぐだよ」と示してくれます。

マウルブロン修道院

マウルブロン修道院の教会堂
マウルブロン修道院の教会堂

マウルブロン修道院は1147年に設立したシトー会修道院です。修道院とは修道会に属する施設であり、修道会とは、俗世から離れてキリスト教精神の下に生きる人々のコミュニティです。西方の修道院では、清貧、純潔、服従をモットーとしました。

修道会にはフランチェスコ会、ドミニコ会、ベネディクト会など様々な派があり、シトー会はベネディクト会から派生して設立した修道会です。シュトゥットガルト郊外にあるマウルブロン修道院は、シトー会修道院のなかでは最も保存状態がよく、世界遺産に登録されています。

修道士たちは、修道院というミクロコスモス(小宇宙)のなかで一切の生活を完結させていました。院内にはパン焼き小屋、鍛冶場、薬草園、薬の調合場、家畜小屋などがあり、自給自足の生活が送れるようになっています。

修道士たちの生活を覗いてみたい方は、ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』という小説がお勧めです。本はとっつきにくいという方は、ショーン・コネリーとクリスチャン・スレイヤーが主演の映画版もあります。

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少し辺鄙な場所にあることもあり、マウルブロン修道院にはまったくと言っていいほど観光客がいませんでした。敷地内には自由に入れますが、メインの教会堂に入るにはチケットが必要です。かつて葡萄酒の酒蔵だった高い建物の横に、インフォメーションセンターがありました。そこでチケットを買い、日本語のオーディオガイドを借りました。

※葡萄酒は修道院生活で必須のものです。パンはキリストの肉を、葡萄酒はキリストの血を表します。

修道院全体の模型。模型の通りに、今でも建物が残っている。
修道院全体の模型。模型の通りに、今でも建物が残っている。

音声ガイドを聞きながら、教会堂へ入ります。教会堂の玄関ホールは「パラディース」と呼ばれ、「楽園」を意味します。これはアダムとイヴが追放される前に暮らした楽園を指し、神の元へ行くには、つまり教会堂へ入るには楽園を通らなければならないという意味から、このような名前で呼ばれます。

パラディ―ス
パラディ―ス

修道院には必ず中庭があります。多くの場合、回廊に囲まれており、薬草を育てるという実用的な利用のほか、修道士たちが周りを歩きながら瞑想をするためにも使われました。マウルブロン修道院では、教会堂の中心に中庭がありました。

中庭を囲む回廊
中庭を囲む回廊

教会堂の内部には、聖堂、食堂、暖炉室、会話が許された場所(修道院によってはおしゃべりが禁じられています)などがあります。2階へは上らなかったので、2階がどうなっているかは分かりませんが、おそらくいくつかの部屋があるのではないでしょうか。

マウルブロン修道院は、後年になると他の多くの修道院と同様に衰退しました。1807年にはプロテスタント(キリスト教の一派であるカトリックに対する新教徒の総称)の神学校として使われはじめます。天体の運行法則を唱えたヨハネス・ケプラーや、小説『車輪の下』の作者であるヘルマン・ヘッセがここの神学校に通いました。

回廊の一角にある噴水
回廊の一角にある噴水

ヘッセ『車輪の下』の主人公が親元を離れて神学校に通うことは、小説を読んだことのある方はご存知でしょう。その神学校はマウルブロン修道院がモデルとなっています。

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さて、教会堂を見終わったあとは、修道院敷地内にあるカフェでお昼ごはんにしました。マウルブロンでつくられている葡萄酒があり、それの赤と白を頼みます。今日からは天気が回復し、暖かくなったのでテラス席で教会堂を見ながら食事にしました。

昼食。どれもおいしかった
昼食。どれもおいしかった

シュトゥットガルトのアパートメントへ

バスの本数は1時間に1、2本。修道院内をぐるっと散歩したあと、寒くならないうちに駅へ戻ります。ミュールアッカー駅でコーヒーを飲みながら電車を待ち、シュトゥットガルト駅へ戻りました。

泊まるアパートメントは高台にあるようで、歩いていくのはなかなか大変そうです。バスかタクシーを使うといい、とオーナーからメッセージが来ましたが、どのバスに乗ればいいかという情報は提供されませんでした(宿予約はBooking.comを使用しています)。

しかしこの旅でGoogleマップのかしこい使い方を見つけました。出発地に駅、目的地にアパートメントを設定して「公共交通機関で行く」検索をすると、最適なバスまたは電車のルートが出てきます。乗るバスの番号が分かったので、安心して目的地へ向かいました。

泊まるアパートメント。魔女の宅急便の世界に入り込んだような景色!
泊まるアパートメント。魔女の宅急便の世界に入り込んだような景色!

泊まる場所と思われる建物の前にいると、女性のオーナーさんが登場。最上階に近い部屋の扉が開けられたとき、思わず「うわ~素敵!」と言いました。赤い屋根の並ぶ景色が美しい。内装も黄緑と明るい色の板で統一されており、センスが良いです。

テラスも素敵。設置された蝋燭に火をつけたかったけれど、マッチがなかった
テラスも素敵。設置された蝋燭に火をつけたかったけれど、マッチがなかった

私も母もすっかり部屋を気に入りました。せっかくなので部屋で夜ごはんを食べようと、冷凍ピザとプラム、ピザにのせるピーマンを買ってきます。西洋のキッチンにありがちな、あの大きなオーブンにピザを入れて焼き、夕食にしました。窓から月が昇ってくる様子が見え、素敵でした。

おわりに

ドイツ旅行3日目は、シュトゥットガルト近郊のマウルブロン修道院へ行きました。

マウルブロン修道院は辺鄙な場所にあるためツアーでは行きずらく、観光客が極端に少ないです。そのため個人旅行でドイツへ行く方には非常にお勧めなスポットです。特に西洋中世史に興味がある方にとっては面白いと思います。日本語音声ガイドもあるため、歴史に詳しくない方でも楽しめます。

4日目はドイツ観光といえばな町、ローテンブルクへ行きます。

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