はじめに
前回の記事では、直島へ行き、地中美術館や現代アートを堪能した話をつづりました。今回は玉藻公園と五色台へ行った話をつづります。
温泉に行きたい
香川へ来てしばらくすると、「せっかく来たんだから、どこか行きたいところはない?」と父に尋ねられました。いや、わたしはゆっくりするためにここに来たので、どこかに行って疲れることはしたくないです。強いて言うなら「温泉に行きたいな」(←前に学生時代の友人と話していたのだが、旅行の行先にゆっくりできる場所を選んでしまいがちなことに、もう若くないことを感じる)。
「仏生山温泉(※)とかでいいけど」※高松市にある温泉施設
「いやあ、あそこはけっこう古いし狭いよ」
そうですか。父がなにやらPCで調べはじめたので、お任せします。いま、県民割引とかいうキャンペーンをやっているらしく、香川県民が香川県内の施設に泊まるのが安くなるそうです。
で、五色台(ごしきだい)という山塊の上にある休暇村に泊まろう、ということになりました。なぜ「五色」かというと、五つの山の峰に、それぞれ色の名前がついているからです。ちなみに、休暇村の浴場は温泉ではありませんが….…せっかく調べてくれたので、いざ行きましょう。
玉藻公園
五色台へは午後になってから行くことにしたので、その前に高松港の近くにある、玉藻(たまも)公園を散歩することにしました。高松駅に着いてすぐに目に入る城壁内部がこの公園なのですが、いつでも行けるから、と思って実は一度も行ったことがありません。
玉藻公園は、かつて讃岐国領主の松平家の居城だった、高松城跡を整備した公園となります。海を防壁代わりにする海城であり、堀には海水が引かれています(そもそも讃岐の国は降雨量が少なく、万年水不足なので、貴重な真水なんて使えないのだ)。
史跡の観光地としては、近くに栗林公園もあるので、興味がある方は過去記事をご確認ください→ぶらり栗林公園【香川県2020-③】。庭園の美しさでは栗林公園のほうが上ですが、玉藻公園は城跡なので、ブラタモリ的な地理や歴史の分析ができることが楽しいです。そういえば、最近ブラタモリで玉藻公園が取り上げられていたので、観光客のなかには、「ブラタモリを見て来ました!」という方もいました。
入場料は200円です。入口付近にコインロッカーもあるので、助かりました。
さっそく、ことでんの高松築港駅のホームからいつも見える、木造の橋へ行ってみます。水に反射した光が、屋根にゆらゆらと揺れていて美しいです。魚はいるかな、と下をのぞいてみますが、見当たりません(のちに分かるが、魚はみんな餌場に固まっている)。
橋を渡ると、本丸跡がありました。城は残っていないですが、もしここに城があったら、瀬戸内海がよく見渡せそうです。
先ほどの橋を戻り、入口付近に戻ってから、別の道へ行ってみました。すると、黒い魚が大量に現れました。えー!?こういう場所によくいるのは、鯉(コイ)なのでは?そうか、ここは海水を引いているから鯉は住めないのか。ということは海の魚….…黒鯛(クロダイ)です!
どうしてこんなにたくさん集まっているかというと、ここが餌やり体験をできる場所だからです。飼いならされている点で、鯉(コイ)と変わらないじゃないか。鯛の威厳はいずこに。水中にぜんぜん魚がいないな、と思っていたら、みんなここにいたんですね。
栗林公園と同じく、ここも木といえば松だらけでした。水が少なくてもよく育つ木だからです。ちなみに、香川県は盆栽でも有名です。県庁所在地の高松に「松」がつくだけありますね。
わー!おもしろいもの見つけちゃった!松ぼっくりを集めるカゴが、点在しています。目的は、集めた松ぼっくりを積み上げて、クリスマスツリーをつくることだそうです。小さい子が喜んで協力してくれそう。
しばらく歩くと、月見櫓(つきみやぐら)と呼ばれる三階建ての建物に着きました。瀬戸内海に面していて、直島から帰ってくるフェリーからも、よく見えたやぐらです。
靴を脱ぎ、スリッパに履き替えて建物内に入ります。やぐら特有の、急すぎる階段を、手すりを使っておそるおそるのぼっていきます。この種の階段のぼるときにはいつも、『千と千尋の神隠し』に出てくるボロ階段を思い出します。板が抜けないかとひやひやしてしまいます。
窓からの景色がとてもきれいで、海と空の青だけが見えます。「月見」櫓というくらいだから、夜になると月がよく見えるのでしょうか。でも、やぐらは物見のために建てられる建物なので、景観がどうこうというより、海に不審な敵がいないかどうか監視する目的で使われていたのでしょうね。ここからなら、敵船がばっちり見えるでしょう。
五色台
玉藻公園を大満喫しました。入場料200円では安すぎるので、もっと取っていいと思います。
コインロッカーから荷物を取り出し、高松駅のバスターミナルに向かいます。宿の人が、送迎車を用意してくれているそうです。別行動をしていた父と合流し、送迎車に乗り込みます。
車はしばらく平な道路を走ったあと、坂を上りはじめました(山の上に宿があるからね)。おっと。これはけっこう長いな、そしてカーブが激しいな。わたしが乗り物酔いしやすいと知っている父が、「大丈夫?」と声をかけてきます。うーん、なんとか(苦笑)。
こういうときは、運転している人は酔わないの法則で、きちんと前を見て、次にどちらに車体が曲がるか認識しておけば、たいてい大丈夫です。というわけで、吐かずに無事、山の上の宿につきました。「酔いそうだった」と母が言います。わたしもけっこうまずかった。
おお、すごくよい眺め!瀬戸内海が一望できます。チェックインしたあと、荷物を部屋に置いて、宿の周囲を少し歩いてみます。
宿の駐車場に、わたしの一眼カメラの5倍くらいの大きさのカメラを、三脚で立てているお兄さんがいました。近くには彼のものと思われるかっこいいバイクが停めてあります。ライダーさんですね。五色台は海に沈む夕日がきれいに見える場所で有名らしいので、写真を撮りにきたのでしょう。日没まであと2時間くらいあるけど……(写真にかける熱量がすごい)。
夜ごはんを食べる前に、風呂に入ることにしました。温泉ではないけれど、浴場からの眺めも素晴らしかったです。そして、部屋から撮った夕日の写真が以下です。
とても贅沢な時間でした。太陽が沈んだあとの、空のグラデーションもきれいです。
駐車場にいたお兄さんはどんな写真を撮ったかな?バイクで走ったら、あのいまいましい山道も楽しいんだろうな。
そういえば、五色台の上から、下へ自転車で下るイベントが人気だとか、父が言っていました。五色台は国立公園なので、民家などが建てられず、自然しかありません。青葉の匂いを胸いっぱいに吸いながら、風をきって走るのは楽しそうです。
宿ではとくに何もせず、谷口幸男の『エッダとサガ』を読んでいました。
おわりに
今回は玉藻公園と五色台へ行った話をつづりました。まだ書きたいことがあるので、気が向いたら続きの旅行記も書きますね。お読みいただき、ありがとうございました。
それではまた。